傍流雑記帳

「本流」をはずれたら、気づいたことがたくさんあった。

大坂報道に見るマスコミのご都合主義について

最近、ネット上でよく話題になるのが、テレビで「日本礼賛番組」がすごく増えているということ。

実際、「日本のここが素晴らしい」、「世界中がビックリする日本」みたいなテーマで盛り上げようという趣向の番組は多いですね。

美しい国 日本」をスローガンとする安倍政権への忖度ではないかと思うほどです。

 

日本人の技術者や職人さんが出てきて素晴らしいワザを披露したり、「快適な日本の生活を捨てて、海外の僻地でこんなに頑張っている日本人がいる」なんていうストーリーが紹介されると、とりあえず面白いし、私もついつい見てしまいます。

 

いわゆるネトウヨの方々も、こういった番組を見ながら、「うん、日本はやっぱりスゴイよね。それに比べてあの辺の国々は・・・」などと溜飲を下げているのでしょう。

 

だけど、当然ながら、「すごい人がいるからその国全体が素晴らしい」ということにはならないし、どこの国にもダメダメな人はいるものです。もちろん日本にもたくさんいます。(私もその一人かもしれませんが・・・)

 

ダメ人間がたくさんいたとしても、中国なんかは、優秀な人トップ10%を集めただけでも日本の全人口に匹敵するわけですし、逆に人口が少なく、国内市場が限られている韓国では、高等教育を受けたの若い人達の「グローバル志向」は日本の若者の比ではありません。

日本礼賛に酔っている間に、世界市場でこれらの国々に追い抜かされつつあるという事実は認識する必要があると思います。

 

また、なにをもって「素晴らしい」というのかも、一概には言えません。

戦後日本の経済成長は、確かに奇跡的ではありましたが、それは、多くの労働者が社畜化することで実現されたものとも言えますし、たとえば、数分の遅れも許されない鉄道運行は、鉄道関係者のとてつもないストレスによってもたらされているわけです。

 

潔癖すぎる国民性や、すぐ群れたがる集団心理と同調圧力は、国内市場が伸びている時にはプラス要因でしたが、結局、日本人をガラパゴス化させる一因となりました。

今は、そういう社会から距離を置きたいと感じている人達もたくさんいると思います。

 

報道番組やワイドショーでは、メインキャスターがいて、そのほかに、コメンテーターと称する人達が出てくるのが、よくあるパターンです。

コメンテーターには、元スポーツ選手などの著名人や、「知識人」(笑)などが招かれることが多いようですが、ほとんどの場合、取り上げられるニュースに関しては門外漢なので、中身のない感想を述べるだけで、「なるほど・・・」と思わせられるコメントは、めったに聞くことがありません。

 

そういった番組を見ていて、気になるのは、「私たち、日本人は・・・」というフレーズをよく聞くこと。

「日本には、日本語が分かる外国人もたくさん住んでいて、その人達も番組も見ているんだ」という視点の欠如と、「日本人なら共通の価値観と感覚を共有しているはず」という勘違いが、こういう発言をさせるんだと思いますが、それを受けて「日本人は単一民族ですから・・・」などという時代錯誤なことをのたまう「コメンテーター」がいるのもビックリです。

 

そんな彼らの基準からすれば、名前こそ日本名であっても「大坂なおみ」は、日本人ではないと思うのですが、全米オープンで優勝したとたんに、「素晴らしい日本人」として、一躍「日本礼賛」の主役になってしまいました。

 

なんと言っても、大坂選手は「最強のテニスプレイヤー」だし、キャラもかわいらしいし、素敵な女性だと思います。

だけど、もし彼女がテニスプレーヤーではなく、「普通の女の子」だったら、日本の社会に受け入れられていたでしょうか。

 

肌の色が違うし、日本語もほとんど話せない。多くの日本人がなぜか罪悪視する「二重国籍」であり、彼女の両親が結婚する時は、親族から猛反対されて勘当同然だったことなどは、「不都合な真実」として、マスコミではほとんど報道されません。

 

もし、一般人として彼女が日本に住んでいたら、たぶん、疎外感に悩まされ、居心地が良いとは言えなかったのではないかと思います。

 

父親の判断で、テニスプレーヤーとしては日本人であることを選び、一応、住民票も日本にあるそうですが、彼女のアイデンティティは、恐らく「ほぼアメリカ人」でしょう。

日本では、二重国籍は許されていないので、22歳までに国籍を選択することになりますが、社会の多様性や将来性、税制面などを考えると、大坂選手が米国籍を選ぶ可能性が高いのではないかと考えます。

 

普段は極めて排他的なのに、都合が良い時だけ異質なものを受け入れて盛り上げるというマスコミの「ご都合主義」は、日本社会の縮図でしょう。

今は、外国人労働者の受け入れなど、様々な課題が出てきている時代です。

マスコミの皆さんには、もっと物事をキチンと考えていただきたいと思います。