傍流雑記帳

「本流」をはずれたら、気づいたことがたくさんあった。

不幸の増殖

川崎市で悲惨な事件が起きてしまいました。

犯人が死亡しているので動機は分かりませんが、「上級国民」の子女が通う学校が狙われたという点で、池田小事件を思い出します。

もし、同じ動機だとすれば、それは「社会への報復」ということになるのでしょうか。

 

2015年の新幹線放火事件、2016年の杉並サンバカーニバル火炎瓶事件などでも、事件直後に犯人が自死していますが、これらの事件も、社会に対する憤りが引き起こした犯罪ではないかと推察されます。

 

日本は、諸外国に比べて、比較的貧富の差が小さいと言われています。

実際、餓死する人は極めて稀ですし、スラム街も見かけなくなりました。

しかし、「みんな横並びで、周りと一緒であること」が重視される日本の社会では、一度レールをはずれると社会から疎外され、「相対的貧困」に陥ってしまうケースが非常に多いのが実情です。

 

その典型的な例が、就職氷河期に社会人となり、不安定な人生を歩まざるをえなくなった人たちです。これは、そもそも「新卒一括採用」という、きわめて不合理な雇用慣習によるものですが、学校を卒業した年の景気がその人の一生を左右するなんて、ほんとにおかしな話です。

 

最近になって、政府が彼らの「就職支援」に乗り出したそうですが、もう40歳前後になっている人を新たに「訓練」して企業に採用を促したところで、ブラック企業で都合よく使い捨てされるのが関の山でしょう。

人手不足と高齢化対策の一環として、どこかのお役人が考えたことなんでしょうが、「10年遅いんだよ!」といったところでしょうか。

 

今回の事件を受けて、「引きこもりを社会復帰させる施策」とやらも検討するそうですが、なんだか、また的外れなことをやらかしそうな気がします。

 

そして、「下流老人問題」も深刻です。年金だけではとても暮らしていけない人はたくさんいますし、現役時代は順調だった人も、ちょっとした事がきっかけで、下流老人に転落してしまうのですから、大変です。今後、超高齢化社会を迎えて、生活に困窮する老人も急増するでしょう。

 

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

 

 

日本は、個人の幸福よりも企業の経済活動が優先される国ですから、これまで国民はよく「調教」され、強く自己主張する人は少数派でした。

しかし、日本経済がじり貧となる中で、従来の「定番コース」からはじき飛ばされて、経済的にも精神的にも行き詰った人が激増すれば、自暴自棄になって自爆テロ的な犯罪にはしる人が出てきても不思議はありません。「敗者の反乱」です。

これは、社会全体の構造的な問題で、「セキュリティの強化」というような対策では追いつきません。

 

今回のような不幸な事件が、今後、増えるのではないかと危惧しています。