傍流雑記帳

「本流」をはずれたら、気づいたことがたくさんあった。

おひとりさま夜の巷を徘徊する

先週末、友人と会う用事があって新宿に出かけた。

最近は、1人で半隠居生活を送っているので、人とまともに話すのは正月以来である。社交的な人だったら耐えられないだろうが、陰キャでぼっち大好きな私は、全然平気だ。

友達と別れたのが午後7時過ぎ。腹が減ったが、どの店もコロナで時短営業の折、急がなくては夕飯を食べそびれてしまう。吉野家に駆け込み、ギリギリで大好きな「炙り塩鯖定食」にありついた。

夜型の私にとって、午後8時というのは、朝型の人達の昼に相当するので、それ以降、食事ができなくなってしまうのは非常に困る。外食に依存するおひとりさまにとって、吉野家はスーパーと同じくライフラインなのである。

牛丼店の場合、ほとんどの客は1人で来店し、黙々と食事を済ませ、20分足らずで退店していくので、ここがクラスターになるとはまず考えられないのだが、8時で閉まってしまう。

 

久々の新宿ということで、吉野家を出てから、ぼっち御用達の1人カラオケ専門店に行ってみたが、やはり8時閉店とのこと。その店は1畳ほどの個室ブースで1人カラオケを楽しむというシステムなので、感染リスクはほぼ0だろうに、全くガッカリである。

「時短要請」は、某知事が目の敵にするところの「夜の街」を封じ込めることが目的だが、業態に関係なく、とにかく全部8時閉店というのは違うと思う。感染リスクが低い業態については、通常営業をして経済的なダメージを少しでも軽減すれば良いし、昼間、普通に賑わっている店の閉店を数時間早めることに意味があるとは思えない。

「夜遅くまで飲んで騒いで」という業態は閉めざるを得ないだろうが、時短を要請するにしても、現状の「店の規模に関係なく一律6万円の協力金」というアバウトなやり方はいかがなものか。「そんな金額では家賃にもならない」という店がある一方で、閉店しながら協力金で大いに潤っている「コロナバブル」の店もあると聞く。

リスクの細分化と支援の公平性が担保されなければ、今後、経済面で深刻な問題を引き起こすことになるだろう。

 

さて、行先を失った私は、夜の新宿を散策することにした。

人通りがすっかり少なくなった歌舞伎町を抜けてゴールデン街へ。8割程度の店が閉店しているようだが、営業している店は客が集中して大盛況である。

新宿2丁目まで足を伸ばすとほとんどの店が閉まっているが、ネオンが消えているのに中からカラオケや嬌声が聞こえてくる「闇営業」の店も。ママ同士の足の引っ張り合いもある街なので、大っぴらに開けられないのかもしれない。

実際のところ、要請という「お願いベース」で、これだけの店が従うというのは驚きだ。欧米に比べて感染者が少ない事実と合わせて、マフィア気取りの某閣僚が「これが日本人の民度の高さ。世界に誇るべき」と発言して、一時話題になったが、残念ながら、日本人の民度はそれほど高くない。

マスクが売り切れだと聞いて薬局の店員に暴言を吐く輩や、医療従事者や感染者を差別する人々、戦前の自警団まがいの「自粛警察」として活動するおばかさんなどを見ればわかるだろう。

では、なぜみんな「要請」に従うのか。それは、「とりあえずお上がいうことには従う」「同調圧力に非常に弱い」という国民性によるものだと私は考える。

時短営業や閉店の張り紙を見てみると、「2月7日まで」としているところが多かったが、これも「緊急事態宣言は1月8日から2月7日まで」とした国の方針に沿ったものだろう。

ところが2日になって「宣言の1か月延長」が発表された。「じゃ、7日までという期限はいったい何が根拠だったのか」という話だが、ガースー首相によると「専門家の意見に従って決めた」とのこと。ウイルスと相談して「1か月で治まってくれ」と取り決めでもしない限り、期限を切ることに意味がないことなど、素人でも分かりそうなものだ。

そもそも、去年の3月に一斉休校が決まった時は、「この2週間が正念場」という話ではなかったか。それがもうすぐ1年である。

政府はもう「オオカミ少年」になってしまったので、今後、求心力は弱まるだろう。

あと1か月で事態を打開できなければ首相は責任を取るそうだが、さて、どうなることか。