軽減税率の悲劇ー頭が良すぎてお間抜けに見えてしまう気の毒な人たち
10月の消費増税まで、残りわずかとなりました。
世界経済が不安定になり、株価も軟調な昨今、タイミング的にはどうかと思いますが、天変地異でも起きない限り、予定通り引き上げられるでしょう。
個人的には、税率アップもさることながら、複雑怪奇な軽減税率による悪影響も気になります。
先日、新聞を読んでいたら、国税庁が「軽減税率Q&A」を改定したという記事がありました。(8月2日 日経新聞)
なんでも、「企業からの質問に解答し」たものがほとんどで、「実務的な内容が目立つ」そうです。
一例として、「屋台のたこ焼きをベンチで食べる場合」が取り上げられていて、これがなかなか面白かったので、紹介したいと思います。
屋台の店主が置いたベンチで食べるなら税率10%(外食扱い)ですが、近隣ビルのベンチで食べる場合はどうなるのでしょう。
答えは、「屋台の店主とビル管理者との間で『ビルのベンチを使って食べていい』というような暗黙の合意があれば10%になる」とのことです。
なるほど~。よく考えますよね。
たしかに理屈としてはそれで良いかもしれませんが、「実務的」には、どうかなあって感じです。
お客は、ビルのベンチについて、店主とビル管理者の間に合意があるかどうか、わかりません。とにかく「暗黙の合意」ですからね。店番をしているのがバイトだったら、店の人に聞いても分からないかもしれません。
となると、「すぐに食べたい」というお客には、「あそこのベンチには、『暗黙の合意』がありますから、税率10%になります」とその都度、案内するのでしょうか。
たぶん、いわゆるエリートと言われるようなお役人が考えた答えなんでしょうが、なんだか現実離れしていて、かなりお間抜けな印象を受けます。
もっとも、彼らとしても、一旦、政府が決めてしまった制度である以上、なんとしてでも辻褄を合わせなければならないというプレッシャーもあるでしょうし、誠にお気の毒と言うしかありません。
このように、突っ込みどころ満載の軽減税率がスタートしたら、あちこちで混乱が起こり、小売業や飲食業に従事する人達、特に小規模事業主の方々にとっては、悪夢ような日々が続くでしょう。
「低所得者層への配慮」と国民のご機嫌取りのために導入される制度ですが、あまりの複雑さに、かえって消費の足を引っ張るかもしれません。
なにはともあれ、国税庁の優秀な職員の方々におかれましては、これからも引き続き、頑張っていただきたいと思います。