傍流雑記帳

「本流」をはずれたら、気づいたことがたくさんあった。

「老後2000万円問題」が長引いている件

参議院選挙も近づいてきましたが、金融庁の報告書に端を発した「老後2000万円問題」は、マスコミでも、さかんに報道されており、収束する気配がありません。

これをきっかけに、自民党が選挙で大敗なんてことになれば面白いのですが、そうはならないでしょう、きっと。

 

金融庁の報告書は、あくまでも「平均」なので、個人の資産状況によってずいぶん事情が変わってくるでしょうし、そもそも、その人が何歳まで生きるかというのは、神様にしか分からないので、この種の話は前提条件の設定が難しいですね。

だけど、大半の国民は、「やっぱり老後にはそのくらい要りそうだ」となんとなく感じているような気がします。

 

もともと今の年金制度が作られた時代には、いまのような少子高齢化は想定していなかったはずで、「どうせリタイア後の余生はあまり長くないだろうし、収入が足りない分は子供に面倒みてもらいなさい」という前提があったのではないかと思います。

 

しかし、今は退職後、30年以上生きる人はたくさんいますし、その一方、子供がいない、もしくは一人しかいないというケースも多いでしょう。

たとえば、一人っ子同士が結婚した場合、夫婦2人で双方の老親計4人のケアをしなければならないわけで、それが数十年続くとなると、かなりの負担となる可能性があります。

 

政府は、「年金は100年安心」と言って憚りませんが、彼らの言う「安心」は、「安心して老後を生きられる」という意味ではなく、「どんなに支給額を減らしても、年金制度を維持します」という程度の意味でしかありません。みなさん、だまされないように!

最近は、高齢者の「活用」も、盛んに議論され、「死ぬまで働け」と言わんばかりの勢いですが、80代、90代でバリバリ働ける人は少数派でしょう。

 

私の父は、75歳で認知症を患い、その後15年間、老人ホームでお世話になりました。

毎月の請求額(家賃+食費+介護費用等)は、だいたい月額23万~24万円だったので、総額4,000万円以上、支払ったことになります。

父は、現役時代に自分の会社を倒産させており、蓄えはほとんどなかったのですが、幸い、年金を月額約25万円もらえていたので、なんとかやりくり出来ました。でも、実際には、これだけもらえる人は、あまりいないようです。

 

年金定期便によると、私が将来もらえる年金は現状で月額約12万円らしいですが、そうなると、父と同じ状況に陥った場合、老人ホームの費用だけで2000万円用意しなければならないことになります。

 

月額12万円では、東京で普通に家賃を払って暮らしていくのも難しいと思いますが、年金額がそれ以下の人もたくさんいます。特に、自営業で国民年金しかもらえない人は満額でも月額約6万5000円ですから、大変です。

 

私の行きつけの定食屋さんは、70代の老夫婦が営んでいますが、どんなに体がきつくても、経済的な理由で引退できないそうです。特に夏の暑い日などは、重い鍋を振る様子が辛そうで、お客の私から見ていても、いまにも倒れるのではないかと心配になります。

 

体力があって、やりがいのある仕事ができる人は何歳まででも頑張ってもらえばいいですが、そうでない人が安心してリタイアできないというのは、先進国とは言えないのではないかと思います。

 

金融庁としては「老後はお金がかかります。みなさん、投資で自助努力を!」という方向へ誘導したかったようですが、金融リタラシーがない人が、銀行や証券会社にノコノコ出かけて行ったところで、「ネギをしょった鴨」になるのが落ちです。

比較的低コスト・低リスクの良心的な投資信託もありますが、そういった商品は当然リターンもそれなりですので、それで「2000万円」を作るのはちょっと厳しいかもしれません。

 

となると、解決策は、

①大増税で年金、社会保障の財源を確保する。

②移民を積極的に受け入れて、人口問題を解決する。

という二択になります。

 

①を選択した場合、それで「将来の安心」が担保されるのであれば悪くはないような気がします。実際、社会保障が充実したヨーロッパの国々では、消費税が20%を超えるところもあります。

その財源で、たとえば、現行の年金制度を一旦リセットして、65歳以上の人にベーシックインカムを適用するなんていうのもありかもしれません。

でも、日本では、利権大好きな政治家、官僚や、前例主義に凝り固まった行政に大きな改革を期待するのは難しいでしょう。

 

②についても、なにかと問題はありそうですが、「とにかく人口問題を解決する」という点では、合理的な選択だと思います。

日本のような賦課方式の公的年金の場合、「高齢者が増えて現役世代が減る」というのは、「年金をもらう人が増えて、その財源の担い手は減る」ということですから、これはもう致命的です。

しかし、今から少子化対策をあれこれ考えたところで、生まれた子供が社会人になるまでには20年前後かかるわけですから、もう手遅れです。

そうすると、残る選択肢は移民の受け入れ以外にないです。

この問題についても、いろいろと思うところはあるのですが、それについては、また改めて書きたいと思います。